クラウドという言葉は、今では誰でも一度は耳にしたことがあるといえるほどメジャーな言葉です。
しかし、登場したのは比較的最近で、2000年初頭にはほとんど使われていませんでした。クラウドは「雲」という意味で、ネットワークの世界を雲に例え、その向こう側にある物理的な存在を意識しなくてもコンピュータサービスが受けられるという意味で使われます。
それでは、この概念はここ10年内に現れたまったく新しい概念なのでしょうか?
今回は、クラウドと、過去の類似コンセプトを比較して、その特徴を考えてみたいと思います。
クラウドとASPはどう違うの?
かつて、ASP(Application Service Provider)と呼ばれるコンピュータサービスの形態がありました。
利用者は、特定のURLに接続するだけで、オンプレミスのように自社でハードや環境を導入することなくサービスを利用することができました。サービスの課金形態は複数あり、利用ユーザ数に応じた課金、トラフィックに応じた課金、使用リソースに応じた課金と様々でした。ブラウザだけあれば利用できる手軽さがウケて、オンプレミスでシステムを導入する代わりにASPサービスを利用する企業も多数ありました。ただしオンプレミスと異なり、カスタマイズに柔軟に対応するのが難しいという難点もありました。
こうした特徴は、クラウドでいうSaaS(Software as a Service)とそっくりです。SaaSはクラウドの一形態ですので、ASPはクラウドサービスに吸収され、別の名になりながら今も継続していると考えることができます。
ユビキタスってあったよね?あれとクラウドの関係は?
一時期、「ユビキタス」という言葉が非常に良く使われる時期がありました。ユビキタスは「いつでもどこでも」といった意味で、いつでもどこでも必要な情報にアクセスできる情報社会の形態を指していました。最近はめっきりユビキタスという言葉を聞かなくなりましたが、なぜでしょうか。
答えは、既にユビキタスが当たり前の社会になっているからです。今では、スマートフォンを通じてネットワークのクラウドサービスに接続し、いつでもどこでも必要な情報にアクセスできる世の中になりました。つまり、クラウドはユビキタスを具現化したものだということです。もちろんスマートフォンのようなPIM(Product Infomation Management:製品情報管理)も大切ですが、クラウドのような広範囲に情報を提供できる情報インフラこそが、ユビキタスにとって最も重要であるといえるでしょう。
グリッドコンピューティングも流行ったけど、クラウドと関係はあるの?
グリッドコンピューティングは分散コンピューティングともいい、膨大なデータ処理を複数のコンピュータで分散して処理することです。実は、クラウドサービスの裏側では非常に多くのサーバが分散してサービスを提供しています。
つまり、クラウドサービスの裏側にはグリッドコンピューティングが隠れているというわけです。クラウドは巨大な1台のスーパーコンピュータがサービスを提供しているわけではありません。無数のサーバが協調して処理を行っているのです。
クラウドはバズワード(流行語)で、Web2.0と同じなのでは?
Web2.0というキャッチワードも一時期、随分と流行しました。Web2.0という言葉はかなりあいまいに使われることが多く、不幸にもあまりその本当の意味を理解されないまま消えてしまった言葉です。
端的にいうと「送り手から受け手への一方通行だったWebが、双方向に情報発信を行う」形態がWeb2.0です。こうした意味ではTwitterやFacebookなどのSNSの普及により、Web2.0は既に実現済みで、そのためこの言葉があえて使われることがなくなったともいえます。
クラウドも既になくてはならないものであり、そうした意味ではWeb2.0と同じですが、Web2.0が概念を表すのに対し、クラウドはサービス全般を指す言葉なので、Web2.0のように流行語として消えてしまうことはないでしょう。
クラウドはこれまでのネットワークサービスの集大成
ご紹介してきたように、ASPもグリッドコンピューティングもWeb2.0も、今ではクラウドサービスの一部です。
つまり、これまでの類似のサービスを吸収しながら、より高度なサービスとして成長したものがクラウドです。そのため、クラウドという言葉はバズワード(流行語)ではなく、しっかりと世の中に根付いて、今後も使われ続けていくでしょう。