クラウドサービスの代表格といえば、Amazon.com社が展開するAWS(Amazon Web Service)でしょう。SaaS、PaaS、IaaSといった定番のクラウドサービスはもちろん、さまざまなAPIを提供し、開発者からも利用しやすいと人気なサービスです。クラウドサービスにおけるAWSのシェアは世界で約3割 と非常に高く、2位以下を離して独走状態です。一方、データベースで有名なOracle社が展開するクラウドサービス「Oracle Cloud」は、今のところAWSにシェアでは及びません。しかし、Oracle Cloudも着実にシェアを伸ばしています。
本稿では、Oracle CloudとAWSのサービスの比較を通じて、両者の違いをご紹介いたします。
Oracle CloudとAWS、それぞれが提供するIaaSサービスの違い
クラウドサービスの重要なサービスがIaaS(Infrastructure as a Service)です。コンピューティング基盤(インフラ)をサービスとして提供するもので、簡単にいえば仮想化されたサーバをサービスとして貸し出すものです。CPUコア数やメインメモリ量、ストレージ量を自由に選択でき、その上にWindowsやLinuxOSを構築する、というものです。
それでは両者のIaaSを比較してみましょう。
Oracle CloudのCPUコア数は、シングルコアから最大52コアまでとかなりのスケーラビリティを持っています。
一方AWSは、具体的なCPUコア数をレンタルするのではなく、ECU(EC2 コンピューティングユニット)という単位でリソースを集約した単位でレンタルする形式です。こちらも小規模から大規模まで、幅広い範囲をカバーしています。
IaaSについては、リソース管理の単位の違いはあるものの、大きな差はないといえるでしょう。
Oracle CloudとAWS、それぞれが提供するPaaSサービスの違い
PaaS(Platform as a Service)とは、OSがインストールされている仮想マシンをレンタルする形態のサービスです。ユーザはOSの管理をする必要はなく、始めから準備されているので、必要なアプリケーションの導入と管理に専念すればよく、使い勝手のよいサービスです。
スケーラビリティについては、IaaSでの比較と同等の結果となりますので、価格面で比較してみましょう。
Oracle Cloudの利用料金は、使用するリソースで決まります。
たとえばデータベースのエディションですが、Oracle Database Standard を使うか、Enterpriseを使うかで変わります。また、CPUスペックや利用時間、インスタンス数、データ容量、バックアップ計画など、きめ細やかな設定に応じて料金が変わる仕組みです。
一方AWSは、先ほどIaaSでもご紹介したECUをベースに、利用時間で課金するタイプです。1秒いくらの細かい課金が特徴で、リソースを確保していても使用しなければ利用料金が0という特徴があります。
Oracle CloudとAWS、それぞれが提供するSaaSサービスの違い
SaaSとは、Software as a Serviceの略で、アプリケーションをサービスとして利用するものです。Oracle Cloudの場合、大きく5つのジャンルに分かれた、多数のSaaSを準備してユーザのニーズに答えています。この5つのジャンルは以下の通りです。
・エンタープライズ・リソース・プランニング・クラウド
・ヒューマン・キャピタル・マネジメント・クラウド
・カスタマー・エクスペリエンス・クラウド
・統合業績管理(EPM)クラウド
・サプライチェーン・マネジメント・クラウド
これだけあれば、自社のニーズにマッチしたサービスを探すのも容易でしょう。
一方AWSは、最大の特徴である「SaaSをAPIとして提供している」という利点があります。AWSのSaaSを細かくAPI単位で公開しているので、開発者が自由に組み合わせて自社オリジナルのSaaSを組み立てることができるというのが、AWSのメリットです。
Oracle CloudとAWSは共存するクラウドサービス
本稿で比較した通り、Oracle CloudとAWSは、似て非なるサービスです。それぞれの利点を理解したうえで最適な方をチョイスしたいところです。
たとえばAWSのSaaS APIサービスは、きめ細やかなSaaSを構築したい場合には最適ですが、その工数を取れない、または維持できない場合には、非常に種類の多いSaaSを展開するOracle Cloudの方がメリットが大きいでしょう。このように、自社の要件と照らし合わせて選択していくことが重要です。