クラウドサービスは、クラウドと一言でまとめて呼ばれがちですが、その構造は実は階層となっています。オンプレミスのシステムも、よく考えてみると同様に階層構造となってはいるのですが、クラウドの階層構造とはどのようなものでしょうか?
今回は、クラウドサービスの階層構造についてご説明いたします。
必ず必要なものはクラウド基盤
クラウドサービスを利用していると、つい忘れがちなのですが、クラウドサービスも当然ながら物理的なコンピュータの上で動いています。ただし、その利用形態はオンプレミスのそれと大きく異なっています。
通常、オンプレミスの場合、1台の物理コンピュータの上でシステムが稼働していますが、クラウドの場合は複数台の物理コンピュータが協調して複数のシステムを動かしています。
これには、仮想化の技術が大きく関わっています。クラウドの基盤部分は、複数台のコンピュータをホストOSとして、それに仮想化ソフトを導入し、その上に複数の仮想コンピュータを作成しています。または、仮想化ソフトの代わりに特殊なソフトウェアを導入し、ホストOSを介さずに直接仮想コンピュータを作成する方法もあります。(これをベアメタル方式と呼びます。)
このように、クラウドの基盤の最大の特徴は、複数の物理サーバが協調して、複数の仮想サーバを動かしている点です。
クラウド基盤の上にはサービス提供レイヤ
まずはオンプレミスのコンピュータについて考えてみましょう。オンプレミスの場合、まず1台の物理コンピュータがあります。これに、OSを搭載します。そしてそのOSに、利用したいアプリケーションをインストールしていきます。
これをクラウドで考えると、最初の物理コンピュータの部分がインフラ部分に相当します。コンピュータサービスを行うための基盤、といったニュアンスです。クラウドでは、この部分をサービスとして提供することができます。つまりユーザーはこのサービスの上に、好きなOSをインストールして、それから上の層を自由に構築することができるわけです。こうしたサービスの形態をIaaS(Infrastructure as a Service)といいます。
クラウドでは、OSおよび利用したいミドルウェアがインストールされている状態をサービスとして提供することができます。この場合、OSやミドルウェアへのパッチ適用やバックアップが自動化されるなど、ユーザーの運用が楽になるサービスを含んでいます。ユーザーはOS部分のメンテナンスは意識せずに、これに自由に利用したいアプリケーション環境を構築することができます。こうしたサービス形態をPaaS(Platform as a Service)といいます。
そして最後が、アプリケーションレベルでのサービスです。ユーザーは環境構築については何もせず、ただクラウドが提供するアプリケーションサービスだけを利用できるわけです。これをSaaS(Software as a Service)といいます。
もっとも身近なものがアプリケーションレイヤ
もっとも手軽で利用しやすいのがクラウドのアプリケーションレイヤ、つまりSaaSでしょう。具体的な例としては、GoogleのGmailやGoogleドキュメント、MicrosoftのOffice365のクラウドサービスなどでしょう。これらは自分のパソコンに何もインストールする必要がなく、ブラウザさえあればすぐに利用できます。もっとも身近なクラウドのレイヤといえるでしょう。
クラウドベンダーによってどのレイヤまで提供するかはまちまち
クラウドにはIaaS、PaaS、SaaSという大きく3つのレイヤがあることをご説明しましたが、クラウドベンダーによって、どのレイヤまでサービス提供しているかはまちまちです。たとえば、AmazonのAWSはIaaS、PaaS、SaaSのすべてのレイヤについてサービス提供していますが、SAKURA InternetはIaaS、PaaSが主体です。また、SaaSのみを扱っているクラウドベンダーもあります。
クラウドの構造は3階層
これまでご紹介してきたように、クラウドサービスは大きく3つの階層に分かれています。基盤部分だけをサービスとして提供するIaaS、OSやミドルウェアまでをサービス提供するPaaS 、アプリケーションをサービス提供するSaaSです。どれを利用するかはユーザーのニーズ次第ですが、このような階層構造のおかげで、ユーザーの選択肢は随分と広くなっているといえるでしょう。